MINI購入物語

2016年夏。ワシの休日はタイクツを極めていた。
我が家に1台だけのマイカーは家人に奪われ、移動の足は自転車のみ。かつて趣味にしていたはずのBianchiのクロスバイクを愉しむ気持ちは薄れてしまっていた。
ちょうどこの頃、私は仕事で郊外の田舎町の役場に出かける機会が増えるようになっていた。社会に出てからはほとんど名古屋と東京を行ったり来たりするビジネス野郎を気取っていたので、郊外に出かけてコミュニケーションを拡げていくのはとても新鮮だった。
それと同時に、「こんな道を旧車なんかでドライブしたら楽しいだろうな…」とボンヤリと憧れるようになっていた。

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旧車&街道レーサー高騰に驚いた。
しかしなんと!驚いたことに、市場に出ている国産人気旧車は今やあり得ないほど高騰しているではないか。昭和のヤンキー風味が漂ったクルマが500万円オーバーって‥‥あり得ん。なんか違う。かといって、ベレGや117クーペ、510ブルなんてノスタルジックカーをいじる技量はない。ロータスヨーロッパやナナサンポルシェなんかもカッコいいけれど、維持費はいったいいくらあれば楽しめるんだ?などと逡巡していたら、クラシックミニにたどり着いた。

 

冷やかしのミニ専門店。
ネットで検索してみると、ミニ専門店はいくつも存在することに気づく。しかもタマ数は予想以上に多いじゃないか。さすがにロングセラー商品だと関心させらるとともに、安心感も湧いてくる。在庫数の多そうなショップを発見し、冷やかしで店まで足を運んでみた。事前知識ナシでいろんなタイプのミニを眺めているうちに、ぼんやりとした私の理想イメージが浮かび上がってきた。『13インチホイール』がイマ風でいいし『フォグランプ4つ並べ』でラリーっぽいスポーツカーになるし『ボンネットやサイドのストライプ』で英国車の雰囲気になるし『クーラーもしっかし効く』なら、万が一真夏にオネーチャンとデートする機会がやってきても困らない…。ヨシこれだな!と。
いかにもシロウトが憧れそうな要件を満たす最終型クーパーは、私にとってとても魅力的に映った。

C.C.Oの出会い。
現在お世話になっているC.C.Oというショップの存在を当時の私は知らなかった。ところがある日(クルマに関心があるわけでもない)知人から「古いミニが並んでる店がキミんちから遠くない場所にあったような…」と情報を得た。それほどの購買意欲があったわけでもないのに、引き寄せらるようにフラフラと立ち寄った。
雰囲気のあるガレージを覗きつつ、
私は近くにいたツナギ服の人に声をかけた。最初に対応してくれたのはスタッフの方だったと思う。
在庫車はあまりない」「みんな好みのクルマをオーダーしていく」「すでに納車待ちのオーダーを何件も抱えている」「なので今からオーダーをいただいても半年後か1年後かわかんないぐらい先の話ですよ」
と、曖昧だけど、きちんと店のスタンスが伝わってくる会話をして過ごしていると、先客の対応を終えた太田社長が現れた。

C.C.O


崩れる理想像。
気さくでジョーク交じりで話かけてくる太田社長は「あ、この人はエエ人やな」と思わせた。その一方、私の描いていた憧れのミニ像について、鋭くも容赦なくダメ出しをしてくる。

『純正の13インチは激重で足回り負担が大きくオススメしない』
『フォグは光量は期待できないし整備性を悪くするだけだしファッションにするにも見た目のヤレが大きい』
『ストライプは塗装ムラを作る』と。
ことごとくワタシの好みは一蹴された。
我が夢は無残に崩れ去った。

ちぇっ!ナンだよ!じゃあもうミニは諦めようか…。

‥‥とは思わなかった。いやいや逆にどんどん惹き込まれていった。その理由がはハッキリしている。

発言に見える品質へのプライド。

『ミニは壊れるっていうけど、それは売ってるショップの問題も大きい。なぜなら‥‥』
『エアコンだってダメじゃないしオーバーヒートだってしない。整備次第で‥‥』
『ちゃんとオーバーホールもしないで納車したら顧客が離れる。ウチの商品は‥‥』
望んでいた好みの仕様は全否定されたけれど、品質に対する向き合い方や、技術力の自信がビンビン伝わってくる。徹底的に努力してクオリティの高いスキルを身につけてきた達人にしか言えない矜恃だとわかる。

やがて太田社長はしみじみ語った。

『バラして組んでを繰り返すうちに、だんだん設計者の気持ちまで透けて見えてくる。このめんどくさい形状にはこんな理由があったんだなあ…ッて』『そこではじめてプロの目線になる』と。
私は「働く人のスタンス」に触れる仕事を30年も生業にしてきた。腕に覚えのあるホンモノのプロかどうかは言葉の端々でわかるつもりだ。この目に狂いはない。
いつのまにか私はミニというクルマ以上に、太田純司という経営者のスタンスが気に入ってしまった
その日以来、週末の私はC.C.Oに足が向いていた。ノスタルジックな外観と比較的手に入れやすい低廉な価格。しかもインジェクション仕様ならエアコン(クーラー)もある。私のニーズにピッタリじゃないか。
私はローバーミニと呼ばれるクルマというより、このオーナーの作るクルマが欲しくなったのだ。

かくして私はこのファクトリーで蘇ったMINIを手に入れることになった。