“クッションがいい”という快適性能について

足を悪くして入院していたおふくろが転院することになり、その送迎を頼まれた。その際におふくろは『大きい方のクルマで来てくれなきゃアカンよ。あんな古い小さなヤツは腰掛けにくいしクッションが悪そうだし』と、事前に要望してきた。

そんなことは言われなくてもそうするつもりだった。ご存知の通り、腰かけにくいし、クッションが悪いし、おまけに転院するババアの荷物も乗り切らないだろう。
で。標題の通り『クッションがいい』という乗り心地に関する表現は、今や死語じゃなかろうか。

たとえば、自動車評論家とかモータージャーナリストと呼ばれる類の大先生たちは『最新モデルの最上級グレードはクッションがいい』なんて表現は、口が裂けても言わないだろう。…いや、むしろ言って欲しいところではあるけれど。

生まれて初めて乗せてもらったクラウン・ロイヤルサルーンは、クラウンという車種、ロイヤルとサルーンを組合せたグレードのネーミング…。当時はその言葉の響きがすべて優雅な豊かさを表現していたと思う。
当時としてはすごく大きな車体だったし、シーツのような白い布製のシートカバーも、これぞ高級の証だと誇示していた。そして、子どものワシは『さすがクラウン!クッションが最高にいい!』と感動した。あの甘美な経験を忘れない。

クルマに興味のない爺さん婆さん世代とっては尚更だ。高級車の概念はクッションがいいことに尽きる。フワフワの乗り心地こそクッションのいい最高の乗り心地だ。コーナリングとか、ロールとかなんて一切関係ない。

そこにクラシックミニを持っていくと、そんな価値観のクルマとは対局にある。まったくすべてがダメな存在だろう。狭い。小さい。低い。おまけにクッションは最悪だ。

‥‥ああ、なんだか昭和のあの感覚をもういちど試してみたくなった。クッションのいいクルマの最高峰、クラウンロイヤルサルーンをありがたがって乗ってみたい。きっとすぐに飽きちゃうのは間違いないんだけれどさ。でもでもでも、クッションのいいクルマ!っていう響きを堪能してみたい!
‥‥と、つい思ってしまうのはクラシックミニオーナーの、ないものねだりの子守唄なんだろう。

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